[ 要 旨 ]

  1. 1食物アレルギーによる症状は臓器ごとに重症度分類を用いて素早く評価し、重症度に基づいた治療を行う。
  2. 2アドレナリン筋肉注射はアナフィラキシーの第一選択薬であり、アナフィラキシーと診断した場合には速やかに投与する。
  3. 3アナフィラキシーでは一旦症状が改善した後に再び症状が増悪することがあるため、十分な観察時間と本人、保護者への指導が必要である。
  4. 4完全母乳栄養が小児期の食物アレルギー発症予防という点において優れているという十分なエビデンスはない。乳児期早期から母乳とともに牛乳タンパク(普通ミルク)を摂取することにより乳児の牛乳アレルギー発症予防効果が報告されている。
  5. 5アドレナリン自己注射薬を処方する際には、使用法だけでなく使用するタイミングも具体的に繰り返し指導する。
  6. 6日常生活における不意の症状発現に対する適切な対応には、正しい資料に基づいた日常の訓練が重要である。

表7-1 即時型症状の臨床所見と重症度分類

食物アレルギーによる即時型アレルギー反応は、血管透過性亢進や血管拡張、気管支平滑筋の収縮により、急速に全身の様々な臓器で症状が進行することが特徴である。そのため起こりうる症状を熟知し、迅速に臓器ごとの重症度を判断し、それに応じた対応をとる必要がある。


図7-1 アナフィラキシーの診断基準

アナフィラキシーは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義される。さらに血圧低下や意識障害を伴う場合をアナフィラキシーショックという。


図7-2 アナフィラキシーの初期治療

各臓器の誘発症状の重症度を評価し、それに応じた治療を行う。アドレナリン筋肉注射の適用はグレード3の症状を認めたときである。ただし、グレード2の症状でも過去に重篤なアナフィラキシーの既往がある場合、症状の進行が激烈な場合、循環器症状を認める場合、呼吸器症状で気管支拡張剤の吸入でも改善しない場合は、アドレナリンの投与を考慮する。


表7-2 アドレナリンの薬理学的作用、副作用

わが国のアドレナリン注射薬の添付文書には、ブチロフェノン系、フェノチアジン系などの抗精神病薬、α遮断薬との併用は昇圧作用の反転により低血圧が認められることがあるため併用禁忌であると記載されている。ただし、アナフィラキシーショックの救急治療時はこの限りでない。

表7-3 小児適用のある鎮静作用の少ない第2 世代ヒスタミンH1 受容体拮抗薬

第1世代ヒスタミン受容体拮抗薬は副作用として眠気やだるさがあり、アナフィラキシー症状としての循環器症状や神経症状との鑑別が困難になるため、安易な投与は控えるべきである。※いずれも蕁麻疹、皮膚疾患(皮膚掻痒症)に対する用量。


図7-3 アドレナリン自己注射薬の処方が勧められる食物アレルギー患者

処方する場合には使用するタイミング、使用方法について練習用模型を用い具体的に指導する。様々な誤使用も報告されており、継続処方時にも反復した指導が必要である。


図7-4 一般向けエピペン®の適応

全身の皮膚症状のみでは対象とならないが、過去に重篤なアナフィラキシーの既往がある場合や、急速に症状が進行する場合には積極的に使用するべきである。