[ 要 旨 ]

  1. 1食物アレルギーの有症率は、乳児期が最も高く加齢とともに漸減する。
  2. 2有症率は、その診断方法(自己申告、感作の有無、食物経口負荷試験結果)により大きく異なるので、結果の解釈に注意が必要である。
  3. 3わが国の即時型食物アレルギーの主要原因食物は鶏卵、牛乳、小麦であるが、年齢群により種類や順位が異なる特徴がある。近年、幼児期の木の実類アレルギーが増加している。
  4. 4誘発症状は皮膚症状が高率に認められ、ショック症状がおよそ10%に認められる。
  5. 5乳幼児期に発症した食物アレルギー児は、その後、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などを高頻度に発症する。いわゆるアレルギーマーチをたどるリスクが高い。

図5-1 年齢分布

0歳が 31.5%で最も多く、以降、加齢に伴い漸減した。2歳以下で 59.7%、6歳以下で 80.5%、11歳以下で 90.7%を占めた。なお、18歳以上は4.7%を占めた。


図5-2 原因食物の割合

鶏卵が34.7%、牛乳が22.0%、小麦が10.6%と多く、以下木の実類、落花生(ピーナッツ)、果物類、魚卵類、甲殻類、ソバ、大豆が上位 10抗原であった。上位 3抗原で全体の67.2%、5抗原で80.5%、上位 10抗原で95.3%を占めた。


表5-1 新規発症の原因食物

原因食物は、年齢群ごとに大きく異なった。0歳群で鶏卵、牛乳、小麦が圧倒的に多いが、1、2歳群では魚卵類、木の実類、3~6歳群では木の実類、魚卵類、落花生(ピーナッツ)、7~17歳群では果物類、甲殻類、木の実類が特徴的であった。

表5-2 誤食発症の原因食物n=2,017

誤食の原因食物は年齢によらず、鶏卵、牛乳、小麦が多かった。


図5-4 臓器別の症状出現頻度

皮膚症状が 最も多く、以下呼吸器 、粘膜、消化器 の順であった。ショックも 10.8%で認められた。


表5-3 食物アレルギーとアレルギーマーチ

報告にばらつきはあるものの、食物アレルギーは他のアレルギー疾患の発症リスクを高める傾向を認めた。