[ 要 旨 ]

1.新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症

  1. 1新生児から乳児期において主に牛乳が原因で嘔吐、血便、下痢などの消化器症状により発症する。主として非IgE 依存性アレルギーの疾患群である。
  2. 2新生児・乳児消化管アレルギーとしてわが国独自の疾患概念として扱ってきたが、小児の消化器分野や国際的な概念も鑑みて、新たに新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症と命名し、再定義された。基本的には新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症は新生児・乳児消化管アレルギーおよびnon-IgE-mediated gastrointestinal food allergies(non-IgE-GIFAs)と同義として扱う。
  3. 3本疾患群にはfood protein-induced enterocolitis syndrome(FPIES)、foodprotein-induced allergic proctocolitis(FPIAP)およびfood protein-inducedenteropathy(FPE)が含まれる。
  4. 4除去・負荷試験を中心に診断し、治療は原因食物の除去が基本である。一般に予後は良好である。

2.好酸球性消化管疾患(eosinophilic gastrointestinal disorders, EGIDs)

  1. 1好酸球の消化管局所への異常な集積から生じる好酸球性炎症性疾患の総称である。病態はIgE 依存性・非IgE 依存性アレルギーが混在し混合性に分類される。新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症の中には病理学的にEGIDs と診断される例がある。
  2. 2原因食物が同定できないなど、食物アレルギーとの関連がはっきりとしない例も存在する。
  3. 3病変部位により好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis, EoE)、好酸球性胃炎(eosinophilic gastritis, EG)、好酸球性胃腸炎(eosinophilic gastroenteritis,EGE)、好酸球性大腸炎(eosinophilic colitis, EC)に大別される。
  4. 4診断には消化管粘膜生検での組織好酸球数増多の確認が必須である。EoE では内視鏡所見が特徴的である。
  5. 5EoE ではプロトンポンプ阻害薬(PPI)が第一選択薬として使用される。
  6. 6治療は局所および全身性ステロイド療法と原因食物の除去が中心である。しばしば再燃する慢性疾患である。

表16-1 新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症の分類と特徴

従来の新生児・乳児消化管アレルギーは新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症、欧文名non-IgE-GIFAとして再定義され, FPIES、PIAP、FPEが含まれる。2017年にFPIESの国際的ガイドラインが示され、表に示す分類がなされた。また、わが国の特徴的臨床像を考慮してchronic FPIESという概念が追加された。


図16-3 好酸球性消化管疾患の診療の流れ

消化器症状から本症を疑う。疑った場合には内視鏡検査を行い、病理組織での好酸球浸潤の有無の確認が必要である。EoEでは年齢により症状が異なる。消化器疾患、アレルギー性疾患および好酸球性疾患としての疾患カテゴリーを考慮して鑑別を行う。EoEでは特異的な内視鏡所見を認める。本症での保険適用薬はないが、EoEではまずPPIを用いて治療を行い、反応不良の場合には局所ステロイド療法か食事療法が選択される。EGEでは中等症までで、かつ緊急性がない場合には、ロイコトリエン受容体拮抗薬の使用も考慮される。効果が不十分であれば全身性ステロイド療法や食事療法を考慮する。難治例では生物学的製剤の使用も考慮されることがある。