[ 要 旨 ]

  1. 1小児期の食物アレルギー発症リスクに影響する因子として、家族歴、特定の遺伝子、皮膚バリア機能、日光・ビタミンD などが報告されているが、中でもアトピー性皮膚炎が重要である。
  2. 2小児期の食物アレルギーの発症予防のため、妊娠中や授乳中に母親が特定の食物を除去することは、効果が否定されている上に母親の栄養状態に対して有害であり、推奨されない。
  3. 3乳児に対して食物アレルギー予防のために、離乳食開始時期や食物アレルギーの原因食物となりやすい食物(鶏卵など)の摂取開始を遅らせることは推奨されない。
  4. 4完全母乳栄養が小児期の食物アレルギー発症予防という点において優れているという十分なエビデンスはない。乳児期早期から母乳とともに牛乳タンパク(普通ミルク)を摂取することにより乳児の牛乳アレルギー発症予防効果が報告されている。
  5. 5乳児期早期からの保湿剤塗布による食物アレルギーの発症予防効果を推奨する十分なエビデンスはない。

図6-1 小児の食物アレルギーのリスク因子と予防法

小児期の食物アレルギー発症に関しては、アトピー性皮膚炎があること、離乳食における抗原食物の摂取開始が遅れることが、リスクとなることがわかってきた。


表6-4 食物アレルギーの発症予防のまとめ

乳児に対して食物アレルギー予防のために、離乳食開始時期や食物アレルギーの原因食物となりやすい食物(鶏卵など)の摂取開始を遅らせることは、逆効果となることを示す報告が多い。普通の人工乳は牛乳を原材料としているため牛乳抗原が含まれている。母乳は母親が食べたものの影響を受けるため母乳栄養の影響を一律に評価することは難しい。