第11章 食物アレルギーの発症と予知と予防

[ 要 旨 ]

  1. 1食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis, FDEIA)は特定の
      食物摂取後の運動負荷によってアナフィラキシーが誘発される疾患である。ただし、原因食物の即時型アレルギーの
      既往を有する場合や経口免疫療法後などはこれに含めない。
  2. 2発症機序はIgE依存性で、原因食物は小麦と甲殻類が多い。食後2時間以内の運動による発症が大部分であるが、
      誘発のしやすさにはいくつかの要因が関与する。
  3. 3発症頻度は中学生約6,000人に1人で、初回発症年齢のピークは10~20歳代である。
  4. 4診断は問診とアレルギー検査から原因食物を絞り込み、誘発試験を実施する。しかし、誘発試験の再現性は
      必ずしも高くない。
  5. 5再発症の防止には原因食物の確定ならびに患者と保護者への教育・指導が重要である。
      その際に、不適切な食事・運動制限で患児のQOLを損なわないよう注意する。
表11-1 発症に影響する要因

FDEIAは通常の即時型反応とは異なり、特定の食物摂取と運動負荷に加え、複数の要因が発症に影響する。問診時に、表中の要因についても確認する。

図11-1 原因食物と発症時の運動

原因食物は、小麦と甲殻類が多いが、果物や野菜の報告例が増加している。発症時の運動種目は、球技やランニングなど運動負荷の大きい種目が多い。その一方で、散歩や入浴中の発症例もある。

図11-3 原因食物診断のフローチャート

詳細な問診や血液・皮膚検査結果より被疑食物を絞り込む。初回の誘発試験は「食物+運動負荷」で行い、その結果が陰性であった場合にアスピリンの前投薬を考慮する。それでも陰性であった場合は原因食物を見直す。誘発試験が陽性であった場合は、運動前の原因食物の摂取制限により、再発症のないことを確認する。

表11-2 生活指導

運動2時間前の原因食物の摂取禁止を指導する。原因食物の完全除去や過剰な運動制限など不適切な指導により、患児のQOLを損なわないよう、注意する。頻回発症例や重症例には、アドレナリン自己注射薬を携帯させることが望ましい。

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