第3章 疫学・自然歴

[ 要 旨 ]

  1. 1食物アレルギーの有症率は、乳児期が最も高く加齢とともに漸減する。
  2. 2有症率は、その判断基準(感作の有無、自己申告、食物経口負荷試験結果)により割合が大きく異なるので、
      結果の解釈に注意が必要である。
  3. 3わが国の即時型食物アレルギーの主要原因食物は鶏卵、牛乳、小麦であるが、年齢群により種類や順位が異なる
      特徴がある。誘発症状は皮膚症状が高率に認められ、ショック症状がおよそ10%に認められる。
  4. 4鶏卵、牛乳、小麦、大豆は自然耐性獲得率が高いと考えられているが、各種調査報告により結果のばらつきが
      大きい。主要原因食物以外の自然歴の調査報告は少なく、実態は不明である。
  5. 5乳幼児期に発症する食物アレルギー児は、その後、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性 皮膚炎などを高頻度に
      発症する、いわゆるアレルギーマーチをたどるリスクが高い。
図3-1 食物アレルギーの年齢分布

0歳が34%で最も多く、以降加齢とともに漸減する。5歳以下で80%、10歳以下で90%を占める。このように我が国の即時型食物アレルギーは乳幼児期に極めて多い。しかし18歳以上も5%おり、注意が必要である。

図3-2 食物アレルギーの原因食物の内訳

鶏卵、牛乳、小麦が多く、上位3抗原で全体の約72%を占める。また上位5抗原で約82%、10抗原では約95%を占める。このように我が国の即時型食物アレルギーは特定の食物によって発症することが多い。

表3-1 新規発症の原因食物

年齢群ごとに5%以上を占めるものを上位第5位まで記載
(今井孝成,ほか.アレルギー.2016;65:942-6より転載)

年齢群によって新規発症の原因食物の種類は異なり、それぞれ特徴がある。3大原因食物は乳幼児期に多く、学童期以降は甲殻類、果物類、魚類などが増えてくる。

表3-2 誤食の原因食物

年齢群ごとに5%以上を占めるものを上位第5位まで記載
(今井孝成,ほか.アレルギー.2016;65:942-6より転載)

年齢群による誤食の原因食物の種類は大きく変動しない。特定原材料である7食物による誤食が非常に多い。

図3-3 臓器別の症状出現頻度

皮膚症状が92%で最も多く、その後呼吸器、粘膜、消化器症状と続く。ショック症状も10%認められる。

表3-3 鶏卵アレルギーの自然歴

OFC:食物経口負荷試験、An:アナフィラキシー、SPT:皮膚プリックテスト、AD:アトピー性皮膚炎

報告によってばらつきが大きいが、総じて高い割合で耐性を獲得していく。我が国の報告では6歳で66%が耐性化するとされる。

表3-4 牛乳アレルギーの自然歴

OFC:食物経口負荷試験、SPT:皮膚プリックテスト、AD:アトピー性皮膚炎、DBPCFC:二重盲検プラセボ対照食物負荷試験

報告によってばらつきが大きいが、総じて高い割合で耐性を獲得していく。我が国の報告では3歳で60%が耐性化するとされる。

表3-5 小麦の自然歴

OFC:食物経口負荷試験

報告によってばらつきが大きいが、総じて高い割合で耐性を獲得していく。我が国の報告では3歳で63%が耐性化するとされる。

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